心臓血管疾患も疑われる症状
循環器内科では、心臓や血管に起こった病気の治療と予防を行います。
胸の奥にある心臓は血液を肺に送り、肺で酸素を取り込んだ血液を大動脈を介して全身に送り、大動脈から枝分かれした動脈から身体の隅々まで血液を届けます。酸素や栄養が使われた血液は静脈を通って心臓に戻ります。
不整脈(心臓のリズム異常)や心筋梗塞、心不全などの心臓の病気、動脈硬化による血管の病気や血管内で血液が固まる血栓症は命に関わることがありますので、早めに診断をし、適切な治療を受けることが大切です。
- 動悸がする
- 脈が乱れる(脈が速くなる)
- 胸がドキンとして不快感を覚え
- 目の前が暗くなる
- 気が遠くなる
- 意識を失って倒れることがある
上記の症状は不整脈(心臓のリズム異常)で
- 胸が痛い
- 胸が締め付けられる
- 胸に圧迫感がある
- 左肩が痛い
- 腕がしびれる
- 背中が痛い
- みぞおちの辺りに重苦しさを感じる
は狭心症、心筋梗塞や大動脈疾患などで
- 息苦しい
- 軽い日常動作で息切れする
- 夜間、就寝中に呼吸が苦しくなる
- 風邪もひいていないのに、夜中に咳が出る
- だるい、疲れやすい
- 足がむくむことが多い
- 急に体重が増えた(2〜3日で2kg以上が目安)
は心不全でみられやすい症状です。
仙台みらい内科では循環器専門医(院長)が診察を行い、必要に応じて胸部X線検査、各種心電図検査、脈波検査、頸動脈超音波検査、心臓超音波検査を行い、短い受診期間で診断と治療を進めます。当院だけで診断、治療ができない場合には、近隣の高度医療機関にご紹介させて頂きますが、高度医療機関での診療後に当院で継続した診療を受けることができます。
循環器内科がかかわる健康問題・疾患
心電図異常・不整脈・心筋疾患
心電図異常
健診の心電図で異常所見があっても、自覚的な症状がない場合、どうしたら良いかもわからず、そのままとしてしまう場合も多いと思います。自覚的な症状がなくても重大な問題が隠れている場合もあり、精査が勧められた場合は、当院を含めた専門医受診を勧めます。
不整脈
不整脈は心臓のリズムの異常を言います。心臓の規則正しいリズムが正常よりも速くなったり、遅くなったり、不規則になったりした状態のことをいいます。心臓に隠れた変化がおこりながらストレス、睡眠不足、疲労などによっても起こりやすくなります。
心臓のリズム異常でも、あまり心配の無い一時的なものが多いですが、ときには注意が必要な場合もあります。そのため、異変を感じたらまずは受診し、診断によってリスク評価をすることが大切です。動悸がある、脈が乱れる・とぶ、めまいがある、意識を失うことがあるなど不安なことがありましたら、お気軽にご相談ください。
心筋疾患
心臓の筋肉である心筋そのものの異常で心臓のリズムや心機能障害をきたす疾患を心筋疾患といいます。心臓のリズムに異常を生じるものとしては、QT延長症候群やBrugada症候群などの普段は無症状であるものの、若い方を中心に特有の条件によって致命的なリズム異常を生じるものが知られます。心機能障害をきたすものとしては、心筋が厚くなり、しなやかさを失い不整脈や心不全を起こしやすい肥大型心筋症、心臓の血液を拍出する力が低下して心臓が拡張し、心不全や不整脈を起こしやすい拡張型心筋症などが代表的な疾患になります。
自覚症状が乏しい心電図異常や不整脈がみられる方の背景に隠れている場合もあり、注意が必要です。
当院では、通常の十二誘導心電図に加えて、日常生活の中での危険な心電図異常を見分ける通常より精密で高機能な24時間心電図検査装置、心臓超音波検査装置を用意しており、危険性をより詳しく分析し、心臓のリズム異常による不測の事態を避けることにつなげていきます。
動脈硬化性疾患
動脈硬化は、様々な因子により動脈の内壁が傷つきながら、酸化したLDLコレステロールやその他の物質が動脈内に蓄積し動脈硬化プラークを形成しながら動脈が狭くなり血流が不安定となり、またプラーク破綻によって血栓による閉塞を起こしやすい状態を指します。
初期段階では自覚症状はほとんどありません。
動脈硬化と血栓症
血液は本来、血管内で凝固しませんが、血管の損傷や様々な要因によって凝固しやすくなることがあります。血液中でできた血栓とよばれる血の塊が血管を閉塞することで深刻な健康問題を引き起こすことを血栓症といいます。動脈硬化による血管機能の低下ではこの血栓症も起こりやすくなります。
動脈硬化によっておこる人生や生命に関わる病気
動脈硬化による健康問題の代表例には、脳血管疾患(脳の血流が影響を受ける疾患)、冠動脈疾患(心臓自身の血流が影響を受ける疾患)、大動脈疾患(全身の血流が影響を受ける疾患)などがあります。
一過性脳虚血発作・脳梗塞
脳への動脈の異常で一時的に血流が低下し一過性に神経症状がでる場合は一過性脳虚血発作、完全につまり血液が流れなくなり、脳の組織が壊れて機能が失われてしまうことを脳梗塞といいます。
脳梗塞にはいくつか種類がありますが、基本的に動脈硬化を基盤として発症します。
脳の細い血管が狭くなって起こる、ごく小さな脳梗塞をラクナ脳梗塞といいます。
脳の比較的太い血管の壁のプラークが破綻し血栓ができて詰まる脳梗塞を、アテローム血栓性脳梗塞といいます。
そして心臓にできた血栓が流れ出て脳の動脈に詰まって発生する脳梗塞を、心原性脳塞栓症といいます。急激に症状が起こりやすく、重度になることが多いです。代表的な例が心臓のリズム異常である心房細動による脳梗塞です。
脳梗塞の予防には、脳への動脈の動脈硬化予防と、心臓を良い状態に保つことが重要となります。
狭心症・心筋梗塞
大動脈からの枝分かれし心臓に血液を供給する動脈を冠動脈といいます。冠動脈に動脈硬化など問題が生じ一時的に血流が低下して、一過性に胸痛などの症状が生じる場合は「狭心症」、冠動脈が完全に詰まって血流が止まり、心臓の筋肉が壊れる場合が「心筋梗塞」といいます。
心筋梗塞では心臓の一部から全体が動かなくなり、脳を含めた全身に送る血液の量が低下する急性心不全や危険な不整脈が生じるため、一刻も早く治療を開始しなければいけません。
大動脈疾患
心臓から全身へ血液を送る体の中で一番太い血管である大動脈に生じる疾患を、大動脈疾患といいます。
大動脈疾患の中でも、動脈硬化によって発症するリスクが高い病気が大動脈瘤です。大動脈瘤は大動脈の壁の一部が瘤(こぶ)のように拡大する病気です。心臓から出てすぐの所に瘤ができるものを胸部大動脈瘤、腹部で大動脈が左右に分かれる手前のところに瘤ができるものを腹部大動脈瘤と呼びます。大動脈瘤ができても自覚症状はほとんどありませんが、瘤がある程度以上まで大きくなると、破裂の危険があります。破裂すると症状は激烈で、激しい痛みだけではなく大量の内出血によってあっという間にショック状態に陥ります。
瘤が小さい場合は降圧薬で血圧を下げる治療を行い、大きくなったら、破裂するリスクが高くなるため、手術が必要になることが多いです。
動脈硬化と危険因子
脳梗塞や心筋梗塞、大動脈瘤などを予防するには、動脈硬化の進行を予防していくことが最も重要で基本となります。動脈硬化の少しでも進行を遅らせるためには、進行を早める危険因子をできる限り減らすことが大切です。
動脈硬化の危険因子となるのは、
- 高血圧症
- 脂質異常症
- 糖尿病
- 内臓脂肪型肥満
などの疾患をはじめ、
- 喫煙
- 運動不足
などの生活状況があげられます。
動脈硬化は加齢に伴って誰にでもある程度はみられるようになるものですが、これらの危険因子の数が多ければ多いほど、動脈硬化の進行が加速度的に早くなることもわかっています。
動脈硬化を予防するためには危険因子の低減が重要となります。
まずは自分の体の状態を把握し、自分にあった対策を行うことが重要です。
中でも、脂質異常は動脈硬化を促進させる要因として特に注意が必要です。
(詳しくは総合内科のページ内「脂質異常症」をご参照ください。)
当院では、健康診断(一次検査)で指摘を受けた方を対象とした二次検査(精密検査)を実施しています。
心電図検査
超音波診断装置
- 動脈硬化に関する検査
- 脳への動脈の動脈硬化に関する検査
動脈硬化の程度やそれに伴う病気の診断、発症の危険度をみていきます。頸動脈エコーは、動脈硬化の検査として最初に行われることが多い検査のひとつです。
当院では頸動脈エコー検査が院内で施行できます。
- 心臓の動脈の動脈硬化に関する検査
心臓自身に血液を届ける冠動脈の動脈硬化を調べるのは容易ではありません。最近では造影剤を用いた冠動脈CT検査によるスクリーニングも行われていますが、最終的にはカテーテルを用いた冠動脈造影検査が必要となります。冠動脈造影検査の負担は少なくなってきていますが、現時点では短期でも入院が必要な検査となります。この冠動脈造影検査の必要性を検討する基礎情報として、十二誘導心電図、24時間心電図、心臓超音波検査などを行います。当院ではこれらの検査を用いて冠動脈造影検査の必要性を検討します。
- 下肢の動脈の動脈硬化の検査
動脈硬化は、部分的に起こるものではなく、全身の血管に及びます。下肢の動脈硬化が進んでいれば、脳や心臓の周囲の血管の動脈硬化も進んでいます。下肢の動脈が狭くなっている人は狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などを合併しやすく、早期の診断、治療が重要となります。
下肢の動脈硬化は、脚の血圧を測る(ABI検査)ことから始まります。ただし、ABIは、家庭用の血圧計では調べることができません。当院ではABI検査を行うことができます。
心臓弁膜症
心臓弁膜症は、心臓の内部で血液の流れを一方向に保つ弁がなんらかの原因で傷むことで起こる病気です。かつては感染症の後遺症によるものが多かったですが、現在では動脈硬化に関連し、年齢と共に明らかになることが多い疾患の一つで患者さんの数も年々増加しています。
心臓弁膜症が発生しても、心臓は無理をしながらもはたらき続けるため、ほとんどの人は症状を感じることができません。時々体調が気になっても、疲れや歳のせいだと思ってしまい、なかなか受診につながらない病気です。自覚できる症状らしいものを感じたときには、病状がかなり進行していることが多いです。
心臓には4つの弁があり、それぞれ関して、閉鎖不全による逆流や狭窄による血液の流出障害が知られています。全身への影響がでやすい左心室の大動脈弁と僧帽弁の弁膜症が代表的です。
大動脈弁狭窄症
大動脈弁が硬くなり、開きにくくなり、心臓からの血液の流出が妨げられる疾患です。心臓から出る血液の量が低下すると失神や胸痛、血液が回しにくくなると心不全を呈します。治療としては大動脈弁を取り換える手術が基本でしたが、最近は負担の少ないカテーテルを用いた治療も広く行われるようになってきています。
大動脈弁閉鎖不全症
様々な原因で大動脈弁にずれが生じ、心臓から流出した血液が再び心臓に戻り、心臓への負担が増加する疾患です。長期間症状が現れませんが、最終的には心不全となり治療が困難となります。治療は内服薬で負担を取っていきながら、必要があれば大動脈弁を取り換える手術が行われます。
僧帽弁閉鎖不全症
全身に血液を送り出す心臓の左側の筋肉の部屋(左心室)の間にある僧帽弁にずれが発生し、肺からの血流が帰る部屋(左心房)へ血液が逆流し、心臓の血液を回す効率が低下しながら心臓への負担が増える疾患です。内服薬で負担を軽減しながら、必要があれば僧帽弁を取り換える手術治療が行われます。最近はカテーテルを用いた治療も開発されてきました。
僧帽弁狭窄症
様々な原因で僧帽弁が硬くなり、左心房から左室への血液の移動が制限されることにより肺からの血流が帰りにくくなる疾患です。左心房の中に血栓が生じやすく脳梗塞が多発しやすいことが知られています。重症な場合、カテーテルを用いた治療や僧帽弁を取り換える手術が行われます。
心不全
心不全は病気の名前ではなく「心臓の異常によって心臓の機能が低下し、さまざまな症状が現れる状態」のことを指します。一般には初期には無症状で慢性心不全として進行し、息切れやむくみなどの症状が現れ、全身のバランスが維持できなくなると急激に悪化し、急性心不全と呼ばれる状態となります。症状を放置して適切な治療を行わないと、最終的には心臓が正常に機能しなってしまい、やがて命に関わります。また、治療が遅れた場合でも、予後が良くないことがわかっています。
代表的な心不全の原因には、高血圧を放置してしまうことで起こる高血圧性心疾患、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患、そして前述した弁膜症などの疾患が挙げられます。
定期的に健康診断を受けていれば安心?
勤務先や地域の健康診断を定期的に受診しているから大丈夫と思っている方も少なくありませんが、健診の血液検査には心不全の兆候を見つけるための項目はありません。心臓がかなり大きくなっているなどの明らかな異常がなければ、健診で引っかかることはないため、心不全の兆候を見落としてしまいます。そのため、健診で異常なしと診断されても油断はできません。
息切れやむくみ、だるさなどの症状が続くときは、循環器専門医を受診して検査を受けることが大切です。問診と診察(聴診など)、心臓の状態を確認する検査を経て、早ければその日のうちに診断がつくこともあります。
当院では心臓疾患や心不全の早期発見と治療に努めています。
深部静脈血栓症と肺動脈血栓塞栓症
各臓器から心臓に血液を返す経路である静脈も加齢と共に機能が低下します。また血液を固める要因も年齢や状態と共に変化します。そして長時間下肢の運動がない状態が続くと下肢の静脈では血流のうっ滞が生じやすくなります。その結果として主にふくらはぎの奥の静脈に血液の塊(血栓)が発生する場合(深部静脈血栓症)があります。血栓がその場にとどまる場合は下肢の症状となりますが、悪条件が重なると短時間に血栓が悪化し、新たに発生した血栓は移動しやすく、そのまま心臓から肺の動脈に移動することがあります。肺の動脈は最終的には毛細血管となることから血栓は肺動脈に詰まった状態(肺動脈血栓塞栓症)となり、いくら呼吸をしても酸素を取り込んだ血液は移動できず、全身の血流と酸素の供給低下の状態となり、ショックとなり命に係わる状態となる場合があります(いわゆるエコノミークラス症候群)。
日常生活で椅子に座ったままで過ごすばかりだと、このような状態になりやすくなります。こまめに立ちあがり身体を動かすことが重要ですし、場合によっては血栓の予防の薬剤が必要になることがあります。
当院ではこのような静脈血栓症の予防にも対応しています。